SSブログ
アート・文化 ブログトップ
- | 次の30件

絵空事  3 [アート・文化]

乳飲み子





         





ラクダのこぶのような





砂丘を二つ越えると





蜃気楼の国の





城が見えてきました












天然の城郭のように





城を取り巻いて





城を守っているのは





あなたの腕時計です












時計の針を





十二時に合わせると





城の門が開きました












陽炎のベッドに眠っている





乳飲み子に乳を含ませるために





あなたは城の門を潜りました












あなたが死んで見えるのは





乳飲み子がまだ胎児であった時





あなたの首をへその緒で絞めたからです












乳飲み子は何も知らずに





あなたの乳をモクモク飲みながら





入道雲のように成長して





王様になりました












蜃気楼のオアシスで





あなたは湯浴みして





王様のお后様になりました





メデタシ メデタシ











   
  蛇足












ビーナスの乳房のような





砂丘を二つ越えても





蜃気楼の国の





城が見えてきません












城は逃げ水に流され





腕時計は風化して





今何時か分からなくなり





王様の国は滅びてしまったからです




















































































































































































絵空事 2 [アート・文化]

    乙女子           







初潮の日に





乙女子は神に抱かれて





天に召されました










生まれ落ちてから





一度も目を覚ますこともなく





透き通った産着にくるまれたまま





眠りに身を任せてきたというのに










初潮の日に





生まれて初めて閉じた目を開いて





神を見た、その衝撃で





乙女子は死んだのです










おちょぼ口を開けて





乳飲み子のように頬を染めて





神に許しを請いながら





乙女子は死んだのです










産着は血に染まり





血を見た産着は発狂し





乙女子の目と口を閉ざして





神の正体を隠してしまいました










初潮の日に





乙女子は光に包まれて





神に召されたのです




























































































































絵空事 1 [アート・文化]

     老人











突堤の先端で





白髪の老人が鬚をひねりながら





釣り糸を垂らしている










乙女子の初潮の血で





赤く染まった日輪がゴム毬のように





水平線の真ん中で弾んでいる










乙女子が着物の裾をめくって





毬つきをしている姿が





老人には見えるのだ










その時、緑色の唐辛子の浮きが





真っ赤に熟して





すーと海に呑み込まれた










老人は釣竿を上げる





観音様のような手で





老人は釣り針を外す










老人は釣り上げた魚を





空に放つ





海が波立つ










魚は何事もなかったように





海を泳いでいたときよりも上手に





空を泳いでいる










   










鯛は嬉々として





日の光を浴びながら





海老と戯れている










蟹は泡を吹いて





空のてっぺん目指して





垂直に歩いている










河豚は腹を膨らませ





歯軋りしながら





上空に浮かんでいる










平目は横目を使って





乙女子に色目を使って





日が沈むのを待っている










出世魚は回遊しながら





名前が変わるごとに





目を回している










   










老人は海の魚を





一匹残らず釣り上げた





日は沈み海に灯りがともった










老人は竜神に姿を変えると





乙姫が待っている





竜宮城に帰っていった




























































































































































































































































- | 次の30件 アート・文化 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。